先日、熊本県が2024年度から県立中学入試に「英語」を出題するという発表がありました。そこで、関東の近県の国公立の中学校や中等教育学校の英語の状況について、少し調べてみました。
埼玉県立
さいたま市立大宮国際中等教育学校は、2019年に開校した新しい学校です。国際という名前がついていますが、教育課程には国際バカロレアを導入してます。
この学校の入試では、一次選抜の適性検査Aで、英語リスニング問題が出題されます。また、二次選抜ではさいたま市で実施するグローバルスタディ(英語)で学んだことを使うグループ面接があります。
千葉県立
千葉市立稲毛国際中等教育学校は、2022年4月に千葉県内初の公立中高一貫校として開校した、新しい学校です。
この春実施された入試では、2次選考の時に英語(リスニング)のテストがあったそうです。英語のレベルは、高いレベルを求められるものではないようです。
東京都内の国立大学附属校
東京都内には8校の国立大学の附属中学校、附属中等教育学校があります。
- 東京大学附属中等教育学校
- 筑波大学附属中学校
- 筑波大学附属駒場中学校
- お茶の水女子大学附属中学校
- 学芸大附属竹早中学校
- 学芸大学附属世田谷中学校
- 学芸大附属小金井中学校
- 学芸大附属国際中等教育学校
2021年の春に、筑波大付属中学校が報告書点に「英語」を追加することが話題になりました。報告書点というのは、高校入試の内申点のようなもので、報告書の学習の記録の部分をそれぞれ点数化して当日のテストの点数に加算して利用されます。国立の中学校や中等教育学校は、小学校5年生と6年生(または6年生)の成績を報告書点として利用する学校が多いです。
詳細は各学校の入試情報に掲載されていることもありますが、現時点で2023年度入試の情報が発表されていない学校も多く、配点についてはWEBサイト等で公開されない場合もあるので、説明会等に参加して聞くといいです。
2022年度入試の筑波大学附属中学の場合、試験が国語50点、算数50点、理科25点、社会25点の合計150点満点。報告書が、国語・算数・社会・理科が各3点、体育・音楽・図工・家庭科・英語が各3点×2の合計42点ということです。
全体の6点ですから、たいしたことがないと思われるかもしれませんが、多くの受験生が同点で並ぶ中、報告書点が合否を分けることは少なくありません。中でも、2倍で計算される教科は重要だと思います。
例えば、学力検査が150点満点、報告書が42点満点だったとして、下のような状況だと、当日の検査の得点が最も高いAさんが落ちて、最も低いDさんが合格するという場合があり得るということになります。ここでは、架空の点数ですが、合否を分ける得点には多くの人が同点や近い点数で並びますので、このような逆転は普通に起こります。
学力検査 | 報告書 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|
Aさん | 128点 | 32点 | 160点 | 体育・音楽・図工・家庭科・英語が2 |
Bさん | 122点 | 38点 | 160点 | 国語・算数・社会・理科が2 |
Cさん | 122点 | 40点 | 162点 | 算数・理科が2 |
Dさん | 120点 | 42点 | 162点 | ALL 3 |
そして...東京都立
東京都では公立の中高一貫校もまた、報告書点があります。小学校の5年生と6年生の2年分全ての教科の評点が対象で、適性検査と合わせた全体の20%〜30%の配点になります。各学校の入試情報のページに記載されています。
国立中のように、教科によって得点配分が違う学校はないのですが、各教科の学習の記録を点数化して合計を出し、最終的には 200点満点や300点満点に換算して使用されます。2021年度から報告書に「英語」の学習の記録が入りますので、当然、「英語」も使用されます。
さて、この報告書点、具体的にはどのように使われるのでしょうか。例えば、「二月の勝者」で島津順くんが受験した学校のモデルの都立小石川中等教育学校では、次のようになっています。(令和4年度 東京都立小石川中等教育学校 募集要項より抜粋)
報告書点の計算方法
各教科の学習の記録(5年) 225点 各教科の学習の記録(6年) 225点 合計 450点
総合成績の算出方法
報告書点(換算) 適性検査I(換算) 適性検査II(換算) 適性検査III(換算) 総合成績 200点 200点 200点 200点 800点
上の例では、適性検査と報告書の得点率と総合成績の得点率の関係を見ると、次のようになります。報告書点によって逆転のチャンスもありますので、報告書点がよけレバ検査を優位にすすめることができるといえます。逆に報告書点が低ければ、当日の検査で高得点をとる必要があります。
適性検査の得点率 | 報告書の得点率 | 総合成績の得点率 | |
例1 | 80% | 50% | 72.5% |
例2 | 70% | 100% | 77.5% |
例3 | 80% | 70% | 77.5% |
このように考えると、当日の適性検査の結果はもちろん大切ですが、小学校の成績もピカピカの優等生の方が有利のようです。
東京都立中等教育学校の報告書については、東京子育て研究所様のこちらの記事が詳しいです。(こちらの記事は、英語が加わる前ですが、報告書点に英語が加わって大枠は同じで各科目の得点が変わったような感じでイメージするといいです。)
まとめ
以前、「英検で特待」という学校もあることを知り、そのことについて調べたことがありましたが、都内の国公立では、報告書点に英語も入りますが、まだ、適性検査の中で英語に関する内容が出題される学校はないようです。
近県の公立の「国際」とつく中等教育学校は、英語の試験をしていますので、近い将来、この経験が他の学校の入試でも取り入れられていくかもしれません。現在のところ、検査の内容は小学校の学習内容の範囲ということなので、小学校の授業をきちんと受けていればそれほど難しくないと思います。ただし、リスニングの問題もあるようですから、基礎英語など聞いて英語を聞くことに慣れているといいかもしれませんね。
東京都の立川国際中等教育学校は、2023年入試については、英語の検査はありませんが、このほど附属小学校が開学したので、小学生が上がってくる頃(2028年入試)には、変わるかもしれません。
現在のところ、東京都内の国公立では英語の検査を実施する学校は少ないのですが、国公立の多くの学校では報告書の学習の記録をそのまま点数化して使用するので、ここに英語が含まれます。英語を習っている子はここで確実に得点したいところです。
学習の記録は小学校の授業での様子にも影響されますし、先生との相性もあります。英語ができるからといって、英語の授業で指導者に対して生意気な態度を取ったしないよう注意する必要がありそうです。( ˆ꒳ˆ; )